上田地方には、奈良時代に信濃国分寺が建立され、古代から仏教文化の浸透がみられます。近年の大規模な発掘調査によって、当時の仏教文化を示す良好な資料が次々に出土しています。
信濃国分寺跡からは、奈良の東大寺や平城宮跡出土の瓦と酷似した、美しい洗練された文様をもつ軒瓦や、円面硯、陶磁器類など、貴重な遺物が多数発見されました。また今回の特別展では、日本窯業史研究所(栃木県馬頭町)にこれまで保管され、このほど当館に移管された信濃国分寺跡出土瓦類もあわせて展示いたします。その中には蕨手文(わらびてもん)、四葉単弁蓮華文、三重圏文鐙瓦(あぶみがわら)などの初公開の珍しい瓦類も含まれています。
国分遺跡群からは、平安時代前期とみられる錫杖鋳型(しゃくじょういがた)が発見されました。この地点は現在の信濃国分寺から北側へ約100mの地点で、信濃国分寺に関わりのある仏具を製作した工房があった可能性が高いと推測されています。
上田市殿城の法楽寺遺跡からは、平安時代後期の小金銅仏や銅製磬(けい)が出土し、注目されました。磬は打ち鳴らす仏具で、平安時代後期のこの磬は、蝶や草花の文様を表現した「花卉蝶鳥文磬(かきちょうちょうもんけい)」とされ、類例の少ない重要な資料です。
鎌倉時代には塩田北条氏が居館を構えた塩田平を中心に、広い範囲で仏教信仰が高まりました。多数の石造五輪塔が建てられ、国宝の安楽寺八角三重塔は鎌倉時代後期の建立とされ、当時の仏教文化の興隆を如実に物語っております。なお、宮大工により制作された、安楽寺八角三重塔の約1/5の精巧な模型が、今回出展されます。また室町時代には、重要文化財の信濃国分寺三重塔や前山寺三重塔などが建立され、板碑なども建てられています。
今回の特別展では、寺院などに伝わる仏具、書画、建築部材、模型などの文化財や、発掘調査で出土した古瓦、小金銅仏、磬、錫杖鋳型、文化財写真などを展示いたします。これらの資料を通して、上田地方の古代・中世の仏教文化の一端をご理解いただければ幸いに存じます。
最後に今回の特別展の開催にあたり、貴重な資料をご出展いただきました皆様方、ご指導、ご協力を賜りました関係各位、諸機関に対しまして、厚くお礼申し上げます。
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