「真田太平記」の主な登場人物

真田安房守昌幸
 戦国の世、上州・信州に城を持ち、稀代の戦略家として武勇をとどろかせた武将。
 躰は矮小だが、顔が大きく、くろぐろとした双眸がいつも煌めき異彩を放つ。執念を燃やし築城した上田城に攻め込む一万の徳川家康軍を退け、〔惚れた男〕豊臣秀吉に命運を賭ける。

真田伊豆守信之(幸)
 真田昌幸の長男。幼名は源三郎信幸、真田家では代々長男の夭逝が相次ぎ、この名が付けられたとされている。長身で肩幅胸幅も広くたくましく、生母・山手殿のおもかげをつたえる。
 幼少より、思慮深く聡明で、父の野生的で破天荒な性格とは対照をなし、そのため父からはしばしば疎まれる。「天下をとれる器」と弟幸村から敬われ、父もまたその資質を認める。
 時代の流れをよみとり、武将から政治家への道を歩み、家康からは強い信頼をうける。真田家と家臣を守るため、領国の治政に全力を傾け、真田家が末代まで存続する礎を築く。

真田左衛門佐幸村
 真田昌幸の次男。幼名は源二郎信繁。きびきびと動く小柄な体躰や、活力にみちた口ぶりは、父昌幸を彷彿とさせる。その父から幼少の頃は溺愛され、戦将としての資質を受け継ぐ。
 奔放な性格で、常に野生的な行動をとり、誰からも親しまれる。
 あくまでも戦将として生きる道を選び、武士の一念を貫きとおし、大坂夏の陣に臨む。紅の旗、吹貫をなびかせた赤備えの佐平次や草の者、家臣たちを率つれ、幸村は緋縅の鎧、赤い陣羽織に身を固め炎のように戦い、散っていく。

小松殿
 徳川の重臣、本田忠勝の娘。家康の養女となり、真田信之に嫁ぐ。秀吉の命による政略結婚であったが、よく夫に仕え、円満な日々をおくる。賢婦の誉れ高く、徳川家の実体をよく夫に伝え、関ヶ原以後は江戸に長く滞在。

山手殿
 昌幸の正室で信之の母。京の公家今出川晴季(菊亭晴季)の娘で名は典子。長身の美女で気位が高く、冷徹な性格。昌幸の女達に嫉妬心を燃やし、昌幸とは気まずい関係が長く続いた。

鈴木右近忠重
 沼田城の支城である上州・名胡桃城の城主、鈴木主水の遺子。名胡桃の城が北条勢に奪われ、父が自決してから、信之の家臣となる。

お徳
 元鉄砲足軽岡内喜六の妻で、真田昌幸の愛妾となる。正室山手殿の眼を逃れ、密かにかくまわれるが、山手殿の討手や樋口角兵衛から命をねらわれる。名胡桃城に逃れて、於菊を出産する。

壺谷又五郎
 真田昌幸配下の草の者。元は武田家の忍びであったが、昌幸がもらいうけ、又五郎も昌幸に惚れ込む。諸国で真田の忍びの脅威を認識させ、お江や奥村弥五兵衛、佐助など手練の配下を縦横に使い、昌幸の戦略を遂行していく。

久野
 山手殿の妹。夫の樋口下総守鑑久が、武田家滅亡の折、自刃したため、子息の角兵衛とともに真田家の庇護をうけるようになる。若い昌幸と関係を持ち、そのために姉・山手殿から強い嫉妬をうけるが、生涯を姉とともに真田家で過ごす。

お江
 元甲賀忍びで武田家に仕えた馬杉市蔵の娘。一日に何十里も駆け、己の躰を自由自在に制御できる、常人にははかりしれない鍛練をつむ。真田の女忍びとして、昌幸に忠誠をつくし、徳川家康を単独で襲撃、甲賀の本拠地に潜入するなど、不死身で超人的な働きをみせる。この物語の冒頭から終わりまで、すべてを見とどけ、信之とともに松代へ移っていく。

樋口角兵衛政輝
 武田家に仕えた樋口下総守鑑久の遺子。幼少から怪力を誇るが、常人とは思えぬ性格で、不可解な行動をとる。真田家にあり、戦では百人力の働きを見せたかと思うと、失踪を重ね、わけもなく信之や幸村に憎悪の念を持つ。

佐助
 向井佐平次と妻もよの間に生まれた子。幼い頃からもよの叔父横沢与七のもと、真田の庄・忍びの里で修行をつむ。優れた草の者として成長し、壺谷又五郎、お江の指揮下でめざましい活躍を見せる。

向井佐平次
 武田家が滅亡する直前、信州・高遠城の合戦に〔長柄足軽〕として参戦、瀕死の重傷を負うが、壺谷又五郎とお江に助けられ、信州の山林をぬけ別所の湯へたどり着く。ここで、源二郎幸村と出会い、家来となる。

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